■■■■■ 疾患覚え書き(2020年6月21日からの分)■■■■■
【11】2020年7月26日
内科学会雑誌 2018年10月 からの抜粋
§1:免疫性末梢神経障害
GBS 先行感染後の急性発症、炎症性多発性ニューロパチー
・脱髄型(AIDP)
・軸索型(AMAN)
の、2つの型に分類
・AMANの標的分子 ガングリオシドGM1 GD1a
・エクリズマブの有用性
§2:虚血性脳血管障害
①アテローム血栓性脳梗塞
急性期:抗凝固薬・・・アルガトロバン・未分化ヘパリン
抗血小板薬・・・アスピリン・クロピトグレル
・シロスタゾール
二次予防:クロピトグレルの選択が多い・他にアスピリン・
シロスタゾール
②ラクナ梗塞 穿通枝領域・細動脈硬化・高血圧が
最大のリスク・15㎜以下
急性期:抗血小板薬・・・オザグレルナトリウム・アスピリン・
クロピトグレル・シロスタゾール
二次予防:アスピリン・クロピトグレル・シロスタゾール
③心原性脳塞栓症 NVAF
急性期:ヘパリン
二次予防:DOAC・ワルファリン
§3:運動ニューロン疾患
①ALS エダラボンの開発
②SBMA
【10】2020年7月23日
日本内科学会誌2020年2月号からの抜粋
(追記は筆者による)
§1:慢性肺アスペルギルス症(CPA)の治療
長期維持療法のVRCZ(voriconazole)とITCZの有用性の
比較
最終転帰における有意差はない
※追記 VRCZの併用禁忌に注意:テグレトール・
カルバマゼピン・バルビタール・リファンピシンなど
:添付文書参照のこと
§2:過敏性腸症候群(IBS)と炎症
IBSの診断基準はRomeⅣによる・・3カ月・1週間
・1回以上・・
PI-IBS 急性胃腸炎後に発症するIBS
急性胃腸炎後に10-20%がIBSを発症するとの報告
§3:リウマチ性髄膜炎の症例報告
抗CCP抗体(ACPA)の抗体価指数(ACPA index)
(髄液ACPA/血清ACPA)/(髄液IgG/血清IgG)
1.3以上で有意
§4:★★★大きく変わったウイルス性肝炎の診療★★★
DLBCL例とFL例の治療過程とHBV DNAの経過および
エンテカビル投与の経過
→ P.314-315に詳細の記事あり:示唆に富む内容
§5:造血器腫瘍に対する免疫療法
再発・難治例のDLBCLに対して、抗CD19CART細胞療法の
第Ⅲ相試験にて40-60%CR率が達成されている
【9】2020年7月12日
♦ HBワクチンについて
HBワクチンの定期接種:
2016年10月から
出生児に対する定期接種化
①1歳になるまでに3回のHBワクチン接種
②1回目 生後2か月 2回目 生後3カ月 3回目 生後7~8カ月
※ 公費での接種
【8】2020年7月4日
♦ 不眠について
「不眠診療はじめの一歩」からの抜粋
(羊土社・小川先生・谷口先生編)
§1 まず、復習・・・
■非ベンゾジアゼピン系薬例:ルネスタ・アモバン
・マイスリー
■メラトニン受容体作動薬:ロゼレム
■バルビツール系:バルビタール・ラボナ
■抗不安薬:デパス・コンスタン(とソラナックス)
・セルシン・レキソタン・メイラックス・ワイパックス
■抗うつ薬:サインバルタ・レメロン・トリプタノール
・デジレル(またはレスリン)
■ベンゾジアゼピン薬:ユーロジン・ハルシオン
・リスミー・レンドルミン など
§2:睡眠の基礎の復習
● NREM 睡眠時間の75-80%
● REM
・夢体験
・自律神経系の変動が激しい
・骨格筋活動が停止
NREMとREMにて90分の睡眠周期・一晩に4-5回繰り返す
● 睡眠ホメオスターシスとサーカディアンリズム
●治療薬選択
①一般的な入眠困難例 マイスリー または ロゼレム
②不安で寝付けない場合 レンドルミン または エバミール
③中途覚醒例・再入眠困難例
ベンザリンまたはロヒプノールなど
★ ベンゾジアゼピン系薬に注意 ★
①鎮静と筋弛緩 ②健忘
③離脱:突然の中断不可 ④習慣性と依存性
⑤反跳性不眠 ⑥せん妄
§3:
①レンドルミン 習慣性・依存性が少ない・
中途覚醒にも有効・翌朝持ち越しのことも
②サイレース:不安やうつ併存例に・依存形成高い
短期間が望ましい
③ユーロジン:中途覚醒の熟眠困難症例へ。
④ハルシオン:健忘・異常行動・幻覚の危険性。
併用禁忌あり:イトリゾールなど→要確認
⑤アモバン:高齢者にも安全に使用。評価は高い など
♦ 「感染対策ルールブック」からほんの一部抜粋
(浜松医療センター 矢野先生著・リーダムハウス社刊)
→ 詳細は原著購入・参照
・インフルエンザウイルス 飛沫感染。
長い距離の空気感染は照明されていない。
・インフルエンザワクチン接種は10月までに
・インフルエンザ罹患従事者は
解熱後24時間にて職場復帰して良い
・先天性風疹症候群の幼児は1歳まで体液から
大量のウイルスを排出する
・風しんワクチンは
妊婦および妊娠予定婦人への接種は行わない
・免疫低下例への接種は行わない
・風しんワクチン接種された場合、授乳機会以外は
他に感染させることはない
・麻しんとムンプスでは2回・風疹では1回、の
予防接種記録があれば、抗体価陰性であっても
追加接種は行わない
・水痘は2回のワクチン接種があれば、免疫のエビデンスがある
【7】帯状疱疹:
帯状疱疹関連痛と水痘・帯状疱疹ワクチンについて
(Medical Tribune
「帯状疱疹・水痘」からの抜粋・要約)
§1:帯状疱疹関連痛(ZAP):
帯状疱疹に関連した疼痛総称・PHNを含む
帯状疱疹後神経痛(PHN):
神経障害性疼痛。皮疹治癒後も遷延する疼痛
ZAP 3つに分類
①前駆痛:皮疹出現前から
②帯状疱疹痛:皮膚病変に伴う疼痛
③合併症による痛み
PHN
「帯状疱疹発症後3カ月を経過しても残る疼痛」・
皮疹治癒後も遷延する疼痛
PHN発症の危険因子
①高齢者②女性③三叉神経領域④重症・広範囲例
抗ウイルス薬ウとイルス薬投与時期遅れ
⑥免疫不全の背景 など
PHNへの移行が強く疑われる場合には、
非オピオイド鎮痛薬は無効→鎮痛補助薬とオピオイドの適用
§2:ZAPの治療
● PHNの治療アルゴリズム
①第一選択:三環系抗うつ薬・
カルシウムチャンネルα2δリガンド・ノイロトロピン
②第二選択:デュロキセチン・メキシレチン
③第三選択:麻薬性鎮痛薬・・フェンタニル・
モルヒネ・オキシコドン など
● ZAPの治療
①非オピオイド鎮痛薬
アセトアミノフェン(1回最大1000mg・1日最大4000mg)
またはNSAIDs
②鎮痛補助薬 三環系あるいはプレガバリン
③オピオイド:トラマドール製剤
※NSAIDsでは
cox-2選択性の高い高い薬剤は副作用が少ない:
セレコキシブ・エトドラクなど
※鎮痛補助薬:抗うつ薬・抗けいれん薬
§3:ワクチンの効果
・ZOSTAVAXは60歳以上の米国人の
帯状疱疹リスクを半減させた
・さらに50歳代でも予防効果と忍容性が確認された
・2016年3月 乾燥弱毒生水痘ワクチンは
① 帯状疱疹予防の効能効果が承認された
② VZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)特異的免疫免疫が
増強されることが確認された
●ワクチン接種の不適当者
明らかに発熱・重篤な急性疾患に罹患・
アナフィラキシーの免疫・明らかな免疫抑制異常・
免疫抑制をきたす治療を受けているもの・妊娠中・その他
●併用禁忌
プレドニゾロンなど・シクロスポリン・
タクロリムス(プロラフ)アザチオプリン
●PPSVとの同時接種は避ける
●インフルエンザワクチンとの同時接種は可能
●他の生ワクチン後では27日以上
不活化は7日以上の間隔をあける
【6】覚え書き(2020/6/30)内科学会誌 他からの抜粋
①変形性膝関節症(膝OA)患者の嗜好食品
(2019/10/12日本医事新報 戸田佳孝先生)
・膝OA患者数 3080万人
・ビタミンKの1日摂取量は進行OA患者ほど少なかった
・ホウレンソウと納豆はビタミンKを多く含み、 膝OAの進行を抑制する
②手が振える・・本態性振戦への対応
(2019/10/12日本医事新報 高橋一司先生)
・軽症 日常生活に支障なければそのまま経過をみる
・中等症 屯用にて内服も検討
・重症 ボツリヌス毒素等を検討
・薬物療法の手順:アロチノール ➡ インデラル
➡ プリミドン追加 など
③感染対策の標準予防策9項目(引用は①②に同じ)
・手指消毒・個人防護具・呼吸器衛生/咳エチケット
・患者配置・患者ケアを行った器具等の取扱い・
周辺環境整備・安全な注射手技など計9項目
④医療関係者のためのワクチン接種
(日本内科学会誌 2016年8月P..1484-1485
B型肝炎・インフルエンザ・麻しん・風しん・
水痘・おたふくかぜ
●肺炎球菌ワクチン(PPSV23とPCV13)
⑤メトグルコ投与時の乳酸アシドーシス発現のリスク要因
(大日本住友製薬)
飲酒・腎機能低下・75歳以上・心血管系疾患
・慢性肝障害・胃ろう・寝たきり・脱水・経口摂取不良・
利尿作用を有する薬剤の使用時・・など
【5】人間ドック学会誌から:覚え書き 2020/6/29
(2020年6号 からの概略抜粋)
§1:健診心房細動(AF)有病率(山形健診センター 斎藤先生他)
AF有病率:
・加齢とともに増加する 1.13 (男性) 0.47 (女性)
・治療率 60歳代で68.8%
・有病率は経年的に増加傾向にある
・未治療者は60歳未満に多い 75歳以上の35%は未治療の状態
§2:前立腺がんのMRI検診の有用性
(新東京病院 能代先生他)
・PSAカットオフ値以下であっても、MRIにて発見された
PSA 3.1-4.0 例へのMRI検査併用の検討も
§3:その他
★我が国の胃がん対策における人間ドックの役割(淳風会健診センター長 井上先生)
Hp感染についての詳細な記録と報告・まとめ
きわめて有用な論文
熟読の要あり
簡略な要約不能・本文熟読 p.7~23
【4】脂質異常症と食事 覚え書き 2020/6/28
( 内科学会誌 2017年4号 からの抜粋 )
§ 脂質異常症の食事管理
総エネルギー摂取量の適正化が重要
健常人の場合:
炭水化物 50-65% 蛋白質 13-20%
脂質 20-30%
脂質異常症患者では
炭水化物 50-60% 脂質 20-25% を推奨
炭水化物の制限について
〇 短期間で体重減少や脂質代謝の改善の報告
〇 極端な炭水化物制限の長期継続は困難
〇 1年後には、総エネルギー制限群との差は消失する
〇 低炭水化物食ではHDLコレステロールと中性脂肪の
改善はあるも、LDLコレステロールが増加することが
示されている
§ 食事中の脂質
食事中の脂質を制限することで・・・
①血清脂質の改善をきたす
②体重減少に有効
③低脂肪食 総エネルギー比 30%以下 ⇒
日本では20-25%推奨
脂肪酸の選択が重要
飽和脂肪酸(SFA saturated fatty acid)摂取を
減らすことは、LDLコレステロール改善に有用
SFAは動物性脂肪に多く含まれる
ただし、SFA摂取が極端に少ないと脳出血の発症率が
高いことの報告あり
総エネルギー比 4.5-7%の範囲での飽和脂肪酸の推奨
具体的には:牛肉・豚肉、特に、脂身・皮・内臓を避ける
乳製品・動物油・バーム油を避ける
飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を増やす
n-3系多価不飽和脂肪酸である、
・エイコペンタエン酸・ドコサヘキサエン酸
の積極的摂取が良い
魚摂取量多いグループで冠動脈疾患が少ない
トランス脂肪酸の摂取には注意:
マーガリン・ファットスプレッド・ショートニング。
これらを使用した洋菓子・パン・揚げ物には注意。
アルコールは肝臓での中性脂肪合成を高める:
1日25g以下・・ビール500ml・日本酒1合くらい
【3】 心不全
(日本医師会雑誌 2020年6月号からの抜粋・大略のみ )
§ 定義とステージ
①ステージ分類:
「A」は、リスク因子あり・器質的心疾患なし・
心不全兆候なし
B → C → D と分類するが、
直線的に増悪するものではないことには注意
「D」は、心不全入院2回/年以上・治療を行うも
NYHAⅢ度より改善しないもの
② 大多数は急性心不全として発症
③ 各段階での治療目標はステージの進行を抑制すること
④ 左室駆出率による分類
・HFrEF
・HFpEF
・HFmrEF( HF with mid-range EF)
HFrEFの中にLVEFが改善することがある
➡ HFpEF improved または、
HFwith recovered EFHFrecEFF
⑤
日本の心不全患者総数
2005年 100万人
2020年 120万人と予想
院内死亡率 8%
退院後6カ月以内の再入院率 27%
§ CS クリニカルシナリオ
CS1 CS2 CS3 による治療選択の検討
HFpEFの増悪の要因として心房細動
高度の左室駆出率低下例では増悪要因は明らかではない
§ 標準薬物治療
HFrEFでは、ACE阻害薬・ARB・MRA・
β遮断薬・利尿薬
HFpEFには、エビデンスが乏しい
など。
【2】 濾胞性リンパ腫
(FL:Follicular Lymphoma)の治療
※ 日本血液学会 臨床血液 2020年2月号より一部抜粋
「治癒」の概念:FLについてはこの解釈は難しい
FLIPI FL国際予後指標 ・・・予後には関連する
FLIPI-2 -FLIPIを修正・・初発FLのPFSを予測する
m7-FLIPI 遺伝子変異の情報を組み込む
・・より詳細な予後予測
§1:治療の開始
・RTX単剤
・RTX併用化学療法
・初回治療でRTXとlenalidomideとも併用される
★新規CD-20抗体であるobinutuzumabがRTXに
替わって化学療法との併用も
★無症候性の低腫瘍量のFLの治療:watch and wait
(WW)が標準治療としての位置
★RESORT試験 RTX単剤奏功例へのRTX維持療法の
利益はない
高腫瘍量例ではRTX単剤より免疫化学療法が通常行われる
①CVP療法
②CHOP療法
③fludarabine(+mitoxantrone)
これらにRTXなどのCD20抗体が追加される
★組織学的転換に注意が必要
BR療法 bendamustineの有用性
§2 :再発・難治例の治療
RTXとlenalidomide併用療法の有用性
§3 :PI3K阻害薬の承認・・治療抵抗性FLに対して
・・・新たな選択肢となる
・idelalisb
・duvelisib
・copanlisib
これらの薬剤の治療抵抗性FLに対する奏効率は50%
【1】 睡眠時無呼吸症候群
2020年6月号 「日本内科学会」誌からの要点のみの抜粋
SASやOSAの語は当たり前のように使用していく。
SAS 睡眠時無呼吸症候群
OSA SASの大部分をしめる閉塞性睡眠時無呼吸
・中等症以上のSASの有症率
男性の23.7% 閉経後女性の9.5%
SASの診断はPSG(睡眠ポリグラフ検査)を用いる
AHI(無呼吸低呼吸指数) PSGにより正確なAHIを計測
することが診断の要
SASの位置づけ
ICSD-3(睡眠障害国際分類第3版)にてSASはSRBD
(睡眠関連呼吸障害)としての位置づけ
最も有効な治療法はCPAP
心血管障害予防のためにも、
一晩に4時間以上のCPAPの装着が必要とされている
SASの治療:CPAPについて
CPAPの保険適用は
次の①②③のすべてを満たす場合にCPAP ただし、
AHI40以上では②の要件を満たせばCPAP適用
① AHIが20以上
② 日常生活に支障あり。日中の傾眠や起床時の頭痛など 。
③ 頻回の睡眠時無呼吸に起因する睡眠の分断化や深睡眠の
著しい減少や欠如など
CPAP機器
AutoCPAPは睡眠中に圧力を自動的に調整するものであり、
CPAPタイトレーションを行うことなく導入できる利点
CPAP使用により咽頭乾燥などの症状の訴えも多い
加温加湿による症状の軽減あり
1995年から加温加湿器内臓型CPAPの使用が行われている
加温加湿の際の結露対策として、熱線による加温チューブの
開発と効果が認められている
CPAP使用による利点
① 脳心血管系疾患抑制の効果
② 生命予後改善効果
③ 利尿剤を含めて3剤以上の治療薬を要する高血圧症患者の
60-80%にOSAを合併する
④ CPAPにより、降圧効果。
冠動脈疾患を4-5% 脳卒中6-8%減少させる
OSA患者の交通事故率
健常者に比して、CPAPをきちんと装着できている群は
健常者と同等 CPAP未使用群は5倍であったとの報告
CPAP治療継続率 5-8割程度に止まる
・・これが今後とも重要課題